対海国の海字表音は マ

1. 対海国は本当に誤り なのか


魏志倭人伝の表音を調べた際に、更なる副産物が あった

魏志倭人伝の表音は上古音か
難升米は漢族

対海国 の比定地は 対馬つしま と思われるが、海字 の表音は マ では無いため長らく誤記誤写を疑われて来た
三国志 紹煕本 は 対海国 と あるが 紹興本 では 対馬国 と書かれているので、こちらが正しい とする見解が大手を振って来たので ある

三国志 の版本の一つ 紹興本 は質が低い と評されているのにもかかわらず、歴史学者のさかしげ な思い込みに より真偽の判定が歪められて いたので ある

しかし、今後は上記のような誤断は撤回される事に なるのかも知れない

何故なら、対海国 の 海字 は、かつて は と発音していた事が分かったから で ある



2. 対海国の表音


魏志倭人伝 内に おいて 対海国 が登場する箇所は、以下の通りで ある
【三國志】 卷三十 魏志 烏丸鮮卑東夷傳 第三十 倭人傳

撰者 : 西晉(晋)朝 陳壽(寿)

始度一海千餘里 至對海國 其大官曰卑狗 副曰卑奴母離 所居絶島 方可四百餘里 土地山險 多深林 道路如禽鹿徑 有千餘戸 無良田 食海物自活 乘船南北市糴

この 対海国 の表音で あるが、どうも次のように なるとの事で ある

魏志倭人伝の表音 - 対海国
名称 上古音 中古音 一般的な日本語表音
対海国 tuəd-m̩əg(トゥァドュマ) tuəi-həi(トゥァィハイ) つしま国/タイカイ国

この表音は以下の Webサイトを参考に した

魏志倭人伝の固有名詞の漢字
魏志倭人伝の固有名詞の漢字-2

# 但(ただ)し、この Webサイトに ある字音は必ずしも正確で無い箇所が幾つも あり、多少は疑ってかかる必要が ある

# 実は要訂正箇所を上記 Webサイト管理人に指摘した事が あるが、受け容(い)れられず無視された事が ある


三世紀の倭語では トゥェ や ドュ と言った発音が行われていたのかも知れない
しかしながら その後の日本語に おいては これらの発音は存在していないので、何処どこか の時点で消失して しまった可能性が ある
或いは、他の発音に同化しくは変遷したと言う事も ある

これは私見では あるが、恐らく当時はだ原日本語の形成が不充分かつ未完了で あったと思われるので、縄紋倭語と韓語そして漢語に よる混合言語の状態で あったのでは ないか と考えている

例えば上記の タ行音で ある、日本語のタ行音表は

タ チ ツ テ ト


で あるが、これは もっと多くの発音が収束されて この様に なった筈で、本来の倭語では これよりも複雑で あった と思われる

次にダ行音で あるが、現代音では以下の発音が存在する

ダ ディ ドゥ デェ ド


しかし江戸時代以前では、

ダ ヂ ヅ デ ド


で あった

更に言えば、日本語では子音が単独で発音される と言う事態は絶対に あり得ないので、何らかの別音に強制的に置換されてしまう可能性が高い
つまり、対海国 の上古音 tuəd-m̩əg(トゥェドゥマ) は、恐らくは以下の様な表音の変遷を遂げたのでは無いかと思う

トゥァドュマ → ツヂマ → ツジマ → ツシマ


これでようやくに して、現代音で ある 対馬つしま に落ち付くので ある



3. 表音変遷と用字改訂


対馬 の現代日本語表音は つしま で あるが、三世紀当時の倭語に おける表音は、今と なっては確かめるすべは無くなって しまって いる
致し方無いので、これを げんつしま と呼称する事に しよう

三世紀の 原つしま の表音を魏使は tuəd-m̩əgトゥァドュマ と聞き取り、魏志倭人伝 に 対海国 と反映させた

当時は漢語に ついても形成が未完了で、古代では部首の有無に関わり無く通音していた時期が あった
恐らく海字 は 毎字 から派生した漢字で あり、派生当初は両字が同音の マ で あったので あろう

だからこそ、原つしま の表音に海字をてたのでは無いかと思う

しかし時代が下り、毎字 と 海字 では字義が異なるために同音では識別しにくくなり、発音を区別する様に なったのでは ないか
その結果が、中古音の 海字 では ハイ と発音すると言う事に至ったので あろう

ただ そうなると、漢語側の発音変遷に より 原つしま の表字は 対海 では不都合が生じる様に なった
言うまでも無く、対海 では つしま と読めなく なって しまったと言う事で ある

これを回避するために倭国側で マ と読める別字を用いる事にし、その候補として 馬字 が考案され、採用されたものと考えられる

つまり、三世紀より後の時代に、倭国側で 対海→対馬 と言う用字改訂を行ったものと思う



4. 思い込みによる誤断をただ


三世紀の 原つしま 国の表記として、対海国 は妥当な もので あった

しかしながら日本の歴史学者は 海字 の上古音が マ で ある事を知らず、つしま とは読めない と言う思い込み で 対海国 を誤記誤写と決め付けたので あろう
こうして、質が良い方の 紹煕本 の記述を捨てて質が劣る 紹興本 の記載を是と すると言う、愚にも付かぬ奇妙な説がまかり通る様に なって しまったと言うわけで ある

やはり 紹煕本 の 対海国 が正しかったので ある



5. 関連 URI


参考と なる URI は以下の通り

対海国 - Wikipedia

公開 : 2014年9月4日
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