1. 邪馬臺 を ヤマト と読めると主張する人は未だに多い…
関西説大和教の信者と言うのは結構いる らしく、Web を探してみると以下の Webページが見付かった
大和と邪摩堆と邪馬台国
# 現時点で この URI は消失している
私は以下で、
邪馬臺 は ヤマト とは読めないと言う事を述べている
臺字訓 邪馬臺はヤマトと読めるのか
と言う訳で、早速 質問を送ってみると何とも意外な回答を得た
どうも上記 Webページの作成者は、現在 闘病中で あって
直ぐには回答を送る事が難しいと言うので ある
流石に病人に対して論争を挑む訳には
参らぬので、回答不要と伝えて おいた
しかし ながら、間違い あらば それは
糾さねば
相成らぬので、"それはそれ これはこれ" と言う事で、上記 Webページの是非は明らかに して おきたい
2. 論の是非
それでは上記 Webページを読み進めて行こう
.1 学研漢和大字典 に おける 臺字 と 台字 の発音
この Webページの骨子は、"「付録図表11-1・大和の古代音」" と言う図表で あろう
この図表の下の方に、
発音記号の部分は、㈱学習研究社発行 藤堂明保編「学研漢和大字典」による
と ある
しかし ながら、藤堂 明保 さんは実は 臺字 の発音に ついては良く分からなくて、その当時の歴史学者に主張に従って、
邪馬臺はヤマトの事だから臺はトと読む
と判断されて 学研漢和大字典 を執筆したらしいと言う事が伝えられている
この事は、以下の "発音に関する議論" と言う箇所にも、少し載っている
台与 - Wikipedia
と言う事で、重要なので再掲するが、
「発音記号の部分は、㈱学習研究社発行 藤堂明保編「学研漢和大字典」による」
と言うのは
特に根拠は無く、単なる循環論法では ないかと思われる
今
手許に ある 学研新漢和大字典 を
繙いてみると、確かに 台字 の項に旧字として 臺字 が
掲げられて おり、台字,臺字 共通の発音として
臺字 と 台字 の発音 (誤)
| 字音候補 |
上古音 |
中古音 |
中世音 |
現代音 |
| 音一 |
dəg |
dəi |
t'ai |
t'ai |
| 音二 |
t'əg |
t'əi |
t'ai |
t'ai |
と書かれている
いやいや、
そんな馬鹿な事は無い
これは、台字 と 臺字 が
別字で ある事を
顧みずに、それぞれの字の音を まるで
音が二通り あるかの様に扱ってしまっていると言う事なので ある
実際には
臺字 と 台字 は別字で あり、厳密に識別されている事は日本書紀に おいても確認出来る
つまり台字 と 臺字 の共通の音が二通り あるのでは無く、それぞれ別の字で別の音が ある と言うのが正しいので ある
つまり、
台字 と 臺字 の共通の音が二通り あるのでは無く、それぞれ
別の字で別の音が あると言うのが正しいので ある
正しい表は以下の通りと なる
臺字 と 台字 の発音 (正)
| 字 |
字音候補 |
上古音 |
中古音 |
中世音 |
現代音 |
拼音 |
呉音 |
漢音 |
万葉仮名 |
| 臺 |
- |
dəg(ダ) |
dəi(ダイ) |
t'ai(タイ) |
t'ai(タイ) |
tái(タイ) |
ダイ |
タイ |
該当する表音無し |
| 台 |
一 |
t'əg(タ) |
t'əi(タイ) |
t'ai(タイ) |
t'ai(タイ) |
tái(タイ) |
ダイ |
タイ |
ト乙類(日本書紀) |
| 台 |
二 |
d̩iəg(ディェ) |
yiei(ィェィ) |
i(イ) |
i(イ) |
yí(イ) |
イ |
イ |
該当する表音無し |
上記の通り、各字の中古音は
臺字 が ダイ で 台字 は タイ で ある
万葉仮名では この内の
台字 の方を 乙類ト音 に採用したと言う事で あり、臺字 を乙類ト音として使用している用例は存在しない
ついでに書くと、臺字 と 台字 の表音を見れば時代毎の表音変遷の様子を読み取れる事が分かる
臺字 は上古音では ダ と表音し、中古音では ダイ と変遷したのであろう
恰度この頃に日本から遣唐使が派遣され、留学僧等が 臺:ダイ と言う漢字の読み方を日本に
齎したものと予想する
その後 台字 との混用が行われて タイ と表音されるように なったものと思われる
.2 魏志倭人伝に邪馬台は無い
上記 Webページでは
「魏志倭人伝」の邪馬台(国)
等と書いているが、実際には 三国志 魏志倭人伝 に 邪馬台 と言う記述は存在しない
後漢書 や 北史 には 邪馬臺 と言う記述は あるが、邪馬台とは書かれて いない
文献に書かれている記述を引くので あれば、正確な表記を期すべきで あろう
思うに、この Webページの作成者は邪馬臺と邪馬台の表記を混同しているので あろう
それが不注意に
拠るものか、それとも故意に拠るものかは、現時点では何とも言えないが
# 関西説大和教 信徒は故意に捏造して読み手を誤認に導く人が いるので、疑ってしまう
.3 頭子音?
当該表の下の注記に、以下の様に書かれている
(注)[ua、わ]が頭子音などの後にくる場合は、 [a、あ]に、かなり近い音として聞こえる。
[uə]と[ə]の関係も同じことが言える。
いやいや、率直に言って これは暴論で あろう
確かに ua に ついては、
倭字の発音
| 字 |
上古音 |
中古音 |
| 倭 |
・uar(ゥァ) |
・ua(ゥァ) |
と言ったものも あるが、これが 臺字 の dəi に適用される訳では無い
臺字 の中古音は dəi で ある、この発音は どう見ても ダイ で あろう
.4 夜摩苔と夜莽苔の苔字
さて この章節の最後に挙げるのが、台字 と関連が ある 苔字 の発音で ある
苔字 の発音は、以下の様に なる らしい
苔字の発音
| 字 |
上古音 |
中古音 |
中世音 |
現代音 |
| 苔 |
dəg |
dəi |
t'ai |
t'ai |
しかし ながら、万葉仮名の使い手達は単純に
苔字 は 台字 に草冠 を載せただけで、音は共通で あると思い込んでいた だけ では無いかと思う
例えば 台字 を乙類ト音で読もうと するのは何と なれば可能かも知れないが、
dəi は普通に ダイ と発音するのが妥当で あり、これを乙類ト音に読ませんと するのは
相当に無茶と言うもので ある
やはり これも、苔字 を乙類ト音だから 臺字 も乙類ト音で あると する主張は、暴論と言う
他無い
3. 暴論は成立せず
当該 Webページの作成者は、最後に以下の様に論を結ぶ
このことから次のことが言える。
(1)邪摩堆の読み方は(やまたい)よりも、むしろ(やまと)が正しい。
(2)邪馬台国の読み方も(やまたい国)よりも、むしろ(やまと国)が正しいのだが、(やまたい国)の読み方が定着しているのでそのように読んでいるに過ぎない。
いや それは無い
邪馬臺は ヤマダイ で あり、乙類ト音とは全く関係無い
若し 邪馬台 と あれば乙類ト音の ヤマト と読めるが、邪馬台 とは書かれては いない
そう言う事で ある
4. 関連 URI
参考と なる URI は以下の通り
藤堂明保 - Wikipedia
公開 : 2014年9月18日