梯子型構成

1. 襷掛たすきがけでは無い結線構成、しかし固陋な者は頑として認めようとは しなかった


ネットワークの冗長化を実現する結線構成手法
或いは、構成図で機器を結線する際の方針と言うべきか
訳語は block diagram, structure chart, figure of constitution, constitution diagram 等と候補語彙が幾つか ある様で あるが、何となく落ち着かない
network configuration chart 等と称するのが良いか



2. 経緯


2002年頃で あったか、当時 PCメーカー系統の企業で SI((System Integration) を行っていたが、或る思いが燻(くすぶ)っていた
主にネットワーク(一部ストレージも当て嵌まる) で冗長構成を実現する際に用いられる手法が、当時は猫も杓子も 襷(たすき)掛(が)け構成 が主流で あった
しかし私は これに疑問を持ち続けて おり、構成の簡明性や障害時の状態遷移、復旧対応の容易性を考えるに及び、襷掛け 構成は最早限界を来(きた)しているで あろうと考えていた
と言う事で当時手掛けていた襷掛け構成を廃し、別の結線構成を採用出来ないものかと考えた
そこで考案した結線構成が、梯子型構成で あった

襷掛図と梯子型図の基本形は以下の通り

襷掛図

図1 襷掛図


梯子型図

図2 梯子型図


この構成を とある NTT東日本のネットワーク技術者に提案した所、

こんな構成は あり得ない


と言われた事が ある
馬鹿と言うか頑固と言うか固陋と言うしか無いが、結線冗長構成は襷掛しか知らなかったので あろう
余りにも愚か過ぎる



3. 正式名称は? 誰が考案した?


実は この 梯子型構成 と言う名称は正式な構成名称では無いのかも知れない
と言うのも、この 梯子型構成 と言うは 2002年頃に自身で命名し、使用し続けている勝手名称に過ぎないので ある
ただ、個人的には、この名称が一般普及してくれると良いか と思っている

なお、本構成は最低 4機で構成可能で あるが、機器群が幾段幾層にも及ぶ、凡(およ)そ重箱の段々重ねの様な状態で こそ真価を発揮する
端から端へ複数の系統として機器群を並べるので、恰度梯子を横に倒した様な絵に なるので この名称を名付けた次第で ある
なお、この複数系統と言うのは通常は 2系統で充分かと思うが、必要に より更に系統を確保する事も ある
実際今までに、3系統での冗長構成での構築を手掛けた事が ある

この様に系統を複数確保する事で、単純な機器間冗長よりも もう少し柔軟性を備える冗長構成が実現可能と なる
ここで言う機器間冗長とは、同種機器群で 1つの最少冗長構成を実現し、アクティヴ/スタンバイ(active/standby) もしくは アクティヴ/アクティヴ 状態として稼動させる構成を指す
多くは アクティヴ/スタンバイ で充分かと思うが、稀に アクティヴ/アクティヴ 構成を要望される事も ある
この アクティヴ/スタンバイ 構成を多段に重ねたのみでも充分に冗長性を確保出来るので あるが、半面障害発生時の通信経路切り替わりを機器毎に想定しなければ ならず、全体見通しが昏いと言うか、透明性が低い
よって、系統を ほぼ完全に分離し、アクティヴ/アクティヴ 構成を捨てる事で、見通しを良くする のである

梯子型図に おける正常時と障害時の通信経路は以下の通り

梯子型図 正常時通信経路図

図3 梯子型図 正常時通信経路図


梯子型図 障害時通信経路図

図4 梯子型図 障害時通信経路図


私は これを 系統冗長 あるいは 両系統現用構成 と呼称しているが、上記 梯子型構成 と共に これらの名称を提唱したい



4. 系統冗長


系統冗長は横書きに両端から書き始めないと、機器が収まらない傾向が ある
コンサルタント等は平気で構成図を縦に書いて来るが、逆に全体を把握しにくい様に思える

冗長系統に おける正常時通信経路は以下の通り

梯子型構成系統冗長 正常時通信経路図

図5 梯子型構成系統冗長 正常時通信経路図


冗長系統に おける障害時に ついて で あるが、機器毎の障害時に おける通信経路は少し図を分けた方が良いか

梯子型構成系統冗長 L3SW#1 障害時通信経路図

図6 梯子型構成系統冗長 L3SW#1 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 負荷分散装置#1 障害時通信経路図

図7 梯子型構成系統冗長 負荷分散装置#1 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 L2SW#1 障害時通信経路図

図8 梯子型構成系統冗長 L2SW#1 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 FireWall#1 障害時通信経路図

図9 梯子型構成系統冗長 FireWall#1 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 L2SW#3 障害時通信経路図

図10 梯子型構成系統冗長 L2SW#3 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 負荷分散装置#3 障害時通信経路図

図11 梯子型構成系統冗長 負荷分散装置#3 障害時通信経路図



梯子型構成系統冗長 L3SW#3 障害時通信経路図

図12 梯子型構成系統冗長 L3SW#3 障害時通信経路図



ただ、惜しむらくは本構成を実際の SI で実現出来る設計技術者は決して多くは ないと言う事で ある

公開 : 2014年3月18日
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