将君命有所不受

1. 事件は現場で起きている!


一度現場を任された者には然るべく裁量を委任され、当事者の判断に より行動させるべきとの考え方で ある

個を重視する考え方で あるため、縦割り組織で受けた指示命令を遂行するに当たり疑問を口に せずに手を動かす傾向の ある日本人には、些(いささ)か適(そぐ)わない感は ある



2. 出典


【孫子】宋本 十一家註 孫子 を採用した
これは、所謂 魏武帝註孫子 の系統に倣う版本で ある

魏武帝、と あれば文献に詳しい者ならば察しよう、三国志 魏の武祖、曹操が註した兵法書で ある

三国志演義 で 孟德新書 を蜀 張松 に孫子の盗作と喝破される場面が あるが、捏造甚だしい
今日(こんにち)に孫子が伝わっているのは寧(むし)ろ曹操が註して抜本断取断捨を断行したためで あり、原典に近い状態で維持されたので ある
曹孟德には感謝感謝と言う他無い
【孫子】九變篇 第八

孫子曰 凡用兵之法 將受命於君 合軍聚衆 圯地無舍 衢地合交 絕地無留 圍地則謀 死地則戰
孫子曰 凡用兵之法 高陵勿向 背丘勿逆 絕地勿留 佯北勿從 鋭卒勿攻 餌兵勿食 歸師勿遏 圍師必闕 窮寇勿迫 此用兵之法也
塗有所不由 軍有所不擊 城有所不攻 地有所不争 君命有所不受
故將通於九變之地利者 知用兵矣
將不通於九變之利者 雖知地形 不能得地之利矣
治兵不知九變之術 雖知五利 不能得人之用矣
是故智者之慮 必雜於利害 雜於利 而務可信也 雜於害 而患可解也
是故屈諸侯者以害 役諸侯者以業 趨諸侯者以利
故用兵之法 無恃其不來 恃吾有以待也 無恃其不攻 恃吾有所不可攻也
故將有五危 必死可殺也 必生可虜也 忿速可侮也 廉潔可辱也 愛民可煩也 凡此五者 將之過也 用兵之災也 覆軍殺將 必以五危 不可不察也

唐突に表れて違和感を覚(おぼ)える やも知れないが、ここに出て来るのが、君命有所不受 で ある



3. 所感


端的に言えば、現場主義、と言う事か
勿論 孫武は指揮系統や文民統制を真っ向から否定している訳では ないので あるが、非常時にも拘(かか)わらず四角四面に行動して上からの裁断待ちでは好機を逸するので、場合に よっては将帥が果断に戦果を入手すべき、と言う事で ある

これは何も古代の将兵軍隊に限った事では なく、現代でも犯罪者に対処する警察官や侵入者を防ぐ自衛官にも当て嵌(は)まる事で あろう

犯人に対して警察官が発砲出来ない状況、或(ある)いは被疑者を拘束出来ない場面等、本来は あっては ならない事態なので ある
また国境侵領や領海侵犯を防ぐ立場に ある自衛官が、攻撃に準じる状況を強要された際には、各自の判断で自衛措置を講ぜずして何とするのか

広義に解すれば、これは会社員の営利行動にも適用されて然るべきで あろう
にも拘わらず、日本の会社員と言うものは、何故か上司の判断が無ければ積極的に動けないか、若(も)しくは動かない事が多い様に思う

その様な事では、個の発言と行動を重んじる外資企業に後(おく)れを取ってしまい兼ねないで あろうに
他社に契約を奪取されてから後悔しても、遅い

そうか、君命有所不受 の反対語は、
これから社に戻って上司の許可を取って来ます
で あったか



4. 関連 URI


参考と なる URI は以下の通り

孫子 (書物) - Wikipedia
竹簡孫子 - Wikipedia

公開 : 2014年5月31日
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