救った者に救われた

ゲシュタポからユダヤ人を救ったポーランド人、英国で救われる


世の中には奇妙な出来事が あったもの で ある
【本当にあった戦争の話】 不思議な戦場の出来事50話 P.152

著者: 広田 厚司

翌日の朝、トゥルスキーはホテルをチェック・アウトする前に、館内の売店でタバコを買ってロビーに戻ろうとしたとき、突然、左方から走ってきた男に突き飛ばされて床に転倒してしまった。

【本当にあった戦争の話】 不思議な戦場の出来事50話 P.152

そこで、トゥルスキーは見知らぬ男の腕をつかむと、ロビーを横切り階段を昇ってチェック・アウト前の自分の室へ連れて行くと、怯える男をベッドの下に隠れるように合図して、急いでベッドの両脇に毛布とシーツを垂らして逃亡者を隠したのである。
うまいことにトゥルスキーが前の晩にこのベッドを使っていたので、シーツの皺もごく自然になっていた。
ついで、着用していた自分の上着とネクタイを手荒く外して、今起きて支度を始めたように繕ったのである。

それから数分の後に二人のゲシュタポがトゥルスキーの室に押し入り、ロビーにいた誰かが二人の男が数分前に急いで階段を昇っていくのを見たといい、それはお前だろうと厳しい口調で迫った。
続けてドイツ人は盛んに詰問したが、何を言われてもトゥルスキーはその都度ただ肩をすくめただけだった。
結局、パスポートは調べられたが部屋の捜索はしないでゲシュタポ達は引き上げていった。

【本当にあった戦争の話】 不思議な戦場の出来事50話 P.155

トゥルスキーは毎日来襲するドイツ機を迎撃するために、スピットファイアMKI戦闘機を操縦して英国海峡上空の哨戒飛行中に突然、上空からドイツのメッサーシュミットBf109戦闘機の急襲を受け、機銃弾の一連射を浴びて血まみれとなり、気を失いかけながらも飛行基地付近まで必死に機を操って戻り、草原へ乗機を胴体着陸させたのだった。

【本当にあった戦争の話】 不思議な戦場の出来事50話 P.155

重傷のトゥルスキーは病院へと急いで運ばれ、外科医のチームが慎重に検討した結果、手術で生命を救うことができると判断され、すぐに脳の手術が行なわれた。
手術が終わってトゥルスキーが意識を取り戻したとき、背の高い白衣を来[註]た男がベッドの脇から自分を見下ろしていることに気がついた。
そして、白衣の男は「私を覚えていますか?」と訛の強い英語で尋ねた。
だが、トゥルスキーは混濁する意識と戦いながら否定するように首を左右に振った。

すると男は、
「私は三年前ウィーンであなたに命を救われたものです」

註:

来字 原文 ママ
恐らくは 着た の誤記か


戦争中の出来事なので決して佳話かわと言うべきでは無いのかも知れないが…

公開 : 2018年2月17日
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